0歳からの口腔育成

乳幼児の歯磨きはだれがする?

vol.11

赤ちゃんや幼いお子さんの歯磨きでは、両親、とくにお母さんの役割が大切です。
何でも口にもっていく時期(生後3ヵ月半を過ぎたころ)には、歯ブラシもおもちゃになります。しかし、白い前歯が顔を見せるころになって、無理やり歯ブラシを入れようとすると赤ちゃんは嫌がるでしょう。無理に歯ぐきをゴシゴシやると、赤ちゃんは泣き出してしまうかもしれません。
そこで乳幼児の歯磨きについて、お母さんに効果的な方法を覚えてもらわなければなりません。年齢に応じた歯の磨き方があるのです。お子さんの歯磨きには、フォーンズ法(描円法)という特別な磨き方がありますし、乳歯の生え方によっても磨くときの注意があります。熟練した歯科衛生士は、お母さんがどれくらい上手に子どもの歯磨きをしているかに気を配ります。歯科衛生士の「コーチ」を受ければ、だれでも乳幼児の適切な歯磨きができるようになるでしょう。乳幼児のお口の健康(口腔衛生)は、お母さんの協力なしにはできません。お子さんのお口の健康はお母さん次第といっていいでしょう。
0歳からの口腔衛生に取り組む歯科医院で、お子さんの歯を定期的に診てもらい、歯科衛生士さんから歯の状態に応じた磨き方を教えてもらうのが一番です。むし歯のリスクが高い場合には、歯と歯の間にフロスを使うのが、効果的です。家庭でのフロッシングの仕方を教えてもらいましょう。

フッ化物はむし歯予防の有力な武器

vol.10

フッ化物がむし歯の予防に大きな効果をもっていることは、数々の科学的データから疑いがありません。
米国やオーストラリアでは、多くの自治体が水道水にフッ化物を添加しているので、子どもたちはフッ化物を含む加工食品や飲料水を通じてフッ化物をたくさん摂取しています。
このため、このような国ではフッ化物の摂とりすぎの危険もありますので、保護者は使用する歯磨き剤の量を気にします。6歳以下の子どもの場合、のみ込まれる歯磨き粉を制限するには豆粒大(約1・4グラム)の使用が有効であり、これでフッ化物過剰摂取の危険は大幅に減少します。米国では1991年以来、フッ化物入り歯磨き粉の製造業者はこの点をラベルに記載するようになり、さらに94年には、2歳以下の子どもにフッ化物入り歯磨き粉を使わせる場合、前もって医師や歯科医師に相談するように推奨されています。
フッ化物入りのジェルや塗布剤など、専門家によって再石灰化療法に使用される製品はフッ化物の濃度が高く、歯のエナメル質の表面にフッ化カルシウムの層をつくります。むし歯菌によって酸ができると、このフッ化カルシウムが歯垢(プラーク)の中に溶け出し、部分的に脱灰されたエナメル質を再石灰化するとともに、むし歯菌の代謝機能に影響してむし歯を予防します。
低濃度のフッ化物は、歯の耐酸性を高めるだけでなく、むし歯菌が糖を酸に変えるのを阻害したり、その代謝機能に影響を与えている可能性があります。

卒乳と《感染の窓》

vol.9

奥歯(第一乳臼歯)が生え始めるころが卒乳(離乳の完了)の目安ですが、この時期は、赤ちゃんの口の中の細菌が大きく変化する時期でもあります。
むし歯の原因になるミュータンス菌やソブリヌス菌は、ツルツルした鉱物質の表面にくっついて歯し垢こう(プラーク)をつくります。そのため歯が生えると、口の中にむし歯菌が感染しやすくなります。1歳7ヵ月~2歳7ヵ月の時期に、まるで窓を開け放ったようにミュータンス菌やソブリヌス菌が集中的に感染することも明らかになっていて、専門家はこの時期を≪感染の窓≫と呼んでいます。もっと早い時期に舌の表面の溝からむし歯菌が見つかることがありますが、いずれにせよ、むし歯菌は特定の時期に集中して感染するのです。この時期は、平均的な卒乳の時期と重なります。授乳は食事に比べると回数が多く、時間が不規則になりがちなので、一般に卒乳が遅れると、むし歯のリスクが高まります。
≪感染の窓≫がいったん閉じると、むし歯菌の感染は少なくなります。つまり、≪感染の窓≫が開いている時期にお母さんが口の中を清潔に保っていると、赤ちゃんへのむし歯菌の感染を防げますし、その後はずっとむし歯菌が感染しにくくなります。逆に、この時期にお母さんの口の中にむし歯菌がたくさんいると、ほぼ確実に赤ちゃんに感染してしまいます。いったんむし歯菌が感染すると、どんなに熱心に歯磨きをしても、むし歯菌は簡単にはなくなりません。この時期のむし歯菌への感染が、お子さんの生涯のむし歯のかかりやすさを左右するのです。

むし歯の菌はだれから感染するの?

vol.8

むし歯菌は、どこから感染するのでしょう。
細菌のDNAを使った研究で、むし歯菌はおもに垂直感染(母親や保育者から子どもへ)することが明らかになっています。そこで、子どもにむし歯菌を感染させたら大変だ、ということで、離乳食をあげるときのスプーンをお母さんが舐めたらダメ、キッスもダメ、頰ずりもダメと極端に警戒してしまうお母さんがいますが、その必要はありません。
むし歯菌の感染は、赤ちゃんの口の中にいる細菌に影響されます。腸の中にビフィズス菌という善玉菌がいるように、口の中にはサングイス菌という善玉菌がいます。サングイス菌が赤ちゃんの口の中の先住民になっていると悪玉菌のミュータンス菌は感染しにくいのです。また、お母さんのお口の中にミュータンス菌が少なくサングイス菌が多ければ、赤ちゃんにとって歓迎すべき感染が成立します。そのためお母さんや保育者が砂糖を控えること、ふだんからちゃんと歯磨きをしていることが大切です。未治療のむし歯があったり、たえずお菓子を口にしているとお母さんのお口の中の細菌に占めるミュータンス菌の割合が高くなり、感染の危険性も高くなるのです。お母さんが飴を舐めていたら、離乳食のスプーンは感染源になりかねませんが、むし歯を治療し、キシリトール入りのガムを嚙んでお母さんの口の中の細菌数を減らすと、赤ちゃんへのミュータンス菌の感染を遅らせ、感染を最小限にとどめることができることがわかっています。

ストローを吹く

vol.7

ストローを使ったことのない子どもに、ストローを渡しても、すぐには使えません。
コップにさしたストローから息を吹いてブクブク遊びをするには、くちびるを突き出してストローの周りに隙間をなくし、舌を丸めるように引っ込ませ、口から息を吹くことができなければなりません。発達障害がある場合には、ストローが吸えるようになるには意識的な訓練が必要です。とくに発達障害のない子どもでも、ふだん口をきちんと閉じていない子どもには、この遊びは意外にむずかしいものです。
舌が上あごに収まらず、だらりと広がっている場合には、口も半開きで口唇の間から舌がのぞいています。舌と口唇はつながっているため、舌が広がったままでは、口唇は閉じないのです。「お母さんみたいに、ストローでブクブクできるかな」。
口唇や舌の発達は、発音、滑舌においてとても重要です。幸い日本語は、音素が少なく、少々口唇や舌の機能が劣っていても意味を理解することができます。しかし、ちょっと複雑な言語になると、とても大きなハンディになってしまいます。

離乳後のおしゃぶりはやめましょう

vol.6

授乳のつづいている時期に、おしゃぶりを使うことについて授乳の障害になること以外にほとんど弊害は報告されていませんが、離乳後のおしゃぶりは発育にとって好ましい習慣ではありません。
子どもにおしゃべりする意欲があっても、おしゃぶりがじゃまで話せません。舌にとっておしゃぶりは余分なもので、舌がきちんと上あごの中にあれば、おしゃぶりが入る余地はないのです。
厳密に言えば、おしゃぶりを使う習慣のある子どもは、歯が前に突き出し気味になります。さらに生後24ヵ月を超えておしゃぶりを使った子どもは、明らかに出っ歯になる確率が高くなります。
このため、米国の小児歯科医はおしゃぶりの使用を24ヵ月かそれ以前にやめさせるよう奨めます。日本小児科学会と日本小児歯科学会は、少しおしゃぶりに厳しく、「おしゃぶりについての考え方」の中で、「発語やことばを覚える1歳過ぎになったら(中略)常時使用しないようにする」、「おそくとも2歳半までに使用を中止するようにする」としています。厚生労働省は、NUKおしゃぶりをめぐる訴訟をきっかけに、母子手帳に「おしゃぶりの長期間の使用」の弊害を追加しました。

甘いもので誤魔化す癖

vol.5

1歳6カ月ごろから始まる反抗期は、お母さんにとっては大きなストレスです。
突然、聞き分けなく、かんしゃくを起こす子どもを前に、育児の自信をなくすお母さんも少なくありません。ひっきりなしに甘いものを与える悪い習慣は、多くの場合、この時期に始まります。
赤ちゃんをいつも機嫌よくさせておきたい、うまく育児ができていることを周囲にアピールしたい、そんな思いから、赤ちゃんが不機嫌にならないように一日に何回もおやつや、甘い飲み物を与えつづけるようになるお母さんがいます。赤ちゃんは甘いものがないと機嫌が悪い、そこでまた甘いものを与える。そんな悪循環に陥ってしまうことがあります。おじいちゃんやおばあちゃんが子育てをするときにはとくにこのような問題が起こりやすいので要注意です。子どもに甘えさせるのと、わがままを何でも聞いて甘やかすのとは、まるで反対のことです。このような悪い習慣は、多くの場合、この時期に植えつけられます。そうなると、むし歯や肥満がもたらされるだけではすみません。生涯の健康、そして子どもが社会できちんと生きていけるように成長する芽を摘んでしまうことになりかねないのです。

ママができる、赤ちゃんのむし歯予防

vol.4

子どものむし歯の予防では、①むし歯の原因になるミュータンス菌に感染させないこと(ママからの感染の予防)、②ミュータンス菌の数を減らし、悪さをしない善玉菌を増やすこと(ママの定期的メインテナンス)が大切です。
①について、フィンランドの研究者サーダリンは、興味深い研究をしています。
歯科健診に参加した妊婦の口の中の細菌レベルを調べて、ミュータンス菌がたくさんいる妊婦を選び出し、出産後、赤ちゃんが3ヵ月~2歳の間、お母さんにキシリトールガムを嚙かんでもらい、子どもの口の中のミュータンス菌の数を調べたのです。子どもにはキシリトールガムを嚙ませていませんが、お母さんがキシリトールガムを嚙んでいたグループでは、子どもの口の中からミュータンス菌は少ししか見つかりませんでした。お母さんがガムを嚙むのをやめたあとも調査をつづけていますが、やはりガムを嚙んだ母親グループの子どもたちは、ミュータンス菌が少ないままでした(母親がガムを嚙んでいたグループでのミュータンス菌の定着率は、3歳までで全体の27%、6歳までで51%)。キシリトールガムがお口の中のミュータンス菌を減らすことは、すでに明らかになっています。したがって、お母さんのお口の中のミュータンス菌のレベルを低くしておけば、子どもに感染しにくくなり、むし歯ができにくくなると考えられます。
この研究以外にも、お母さんの口の中のミュータンス菌を減らす予防処置によって、子どもの口の中の細菌に大きな差が生じたという研究があります。この研究では、3歳で実験を終了したあとも、その差は開いたままでした。つまり、予防処置によってミュータンス菌が減り、代わりにいわゆる善玉菌が増えたため、子どもがミュータンス菌に感染しにくくなったものと思われます。子どものむし歯の数にも、当然大きな差が出ています。

初めての反抗期

vol.3

小さな奥歯(第一乳臼歯)が生え始めるころ(1歳2ヵ月~1歳4ヵ月)、赤ちゃんは初めて「自分」を意識し始めます。自分の名前、自分のおもちゃ、自分の着るもの、食べるもの、何でも自分で選ばないと気がすまない時期があります。こうしてしばらくすると、反抗期が始まります。 喃なん語ご (「ンマー」「マンマ」)ではなく、ことばらしいことばを話し始めます。この反抗期に出会って、たいていの親は育児の最初の壁にぶつかるものですが、深刻に考える必要はありません。この時期に、ことば、知能、好奇心、社会性がめざましく発達します。
二語文をしゃべり始め、2歳のお誕生までにめざましい発達をみせます。この時期、赤ちゃんとの会話が始まります。食べ物を嚙か むことで舌が発達します。前歯が生えそろい、舌が自由に動かせるようになると、「おたるたん」だったり「おしゃるしゃん」だったのが、いつの間にか「おさるさん」になります。

ほ乳瓶の間違った使い方

vol.2

1歳から1歳2ヵ月になると、前歯が生えそろいます。この時期に、ポタポタと長時間かけてジュースや乳酸飲料を与えられたのでは、生えたばかりの乳歯はひとたまりもありません。離乳期に、ミルクの代わりにジュースを入れるのは間違ったほ乳瓶の使い方です。
赤ちゃんのうちにこれを経験してしまうと、甘いほ乳瓶が癖になってしまいます。甘いほ乳瓶をくわえていないと泣きやまない。こうなったらもう手に負えません。寝る前に、甘いほ乳瓶を与える習慣をつけてしまうと、寝ている間は唾液の分泌がほとんどないために、ひどいむし歯をつくってしまいます。
乳児に、果汁を与える場合、スプーンで与えるだけで十分です。ビタミンCが大切だと考え、たくさん与えても、おしっこに出てしまうだけですし、お腹をこわしてしまうこともあります。水分補給のためには白さ湯ゆ、お茶などを与えるようにしましょう。